青山学院大学 大学案内2018
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12「野球の魅力ってなんですか?」とよく聞かれます。そんな時、私は「スポーツの中で唯一、ボールの行方と点が入る場所が違うのが野球です。外野にボールがあるのに、点はホームで入る。投球の間には駆け引きがあり、一瞬で人が動き、知恵や戦略も連動して動く頭脳的な部分が魅力です」と答えます。高校時代から野球ファンだった私は今、ニューヨークに暮らし、NHKのメジャーリーグ中継を担当するテレビディレクターをしています。毎日、中継車に乗り、何台も並ぶモニターを観ながら、カメラマンや映像の切り換えを務めるスイッチャー、VTRを担当するスタッフなどに指示を出し番組を構成する仕事です。目の前で展開されるプレーを観て、冷静に判断しつつ、次のシーンを予測していく。理想的な瞬間をとらえるためには、瞬時に選手の心の動きを読み、考えを先へと向けなければなりません。何が起きるかわからないことが、難しくも楽しい点です。もともとは大学院を修了後、東京のテレビ制作会社に入社し、NHKのスポーツ中継部に派遣となり、サッカー班のアシスタントディレクターを務めていました。野球に携われず、物足りなさを感じていた時に「ニューヨークでディレクターを探している」という話を聞き、会社を辞めて渡米することを決断しました。異国の地で、国籍の異なるベテランスタッフに囲まれ、英語が通じないなど悔しい思いも経験しましたが、今ではMLBワールドシリーズやオールスターゲームのような大きな仕事に指名され、やっと一人前のディレクターとして認められた気がします。「チャンスがきたらYESと言う」をモットーに掲げ、実際に行動に移せたのも、その価値を教えてくれた方々に出会えたからです。「好きなことを徹底的に追求しろ」と応援してくれた恩師との出会いが、今の私を形作ったといっても過言ではありません。大学3年次に坂口周作先生のゼミに入り、純文学だけでなく詩に込められたペーソスやユーモアから社会を読み解くおもしろさに気づき、多彩なアングルから社会の本質を知ることを学びました。社会の表裏を意識するようになり、世界をもっと知りたいと思うようになったのも先生から影響を受けたからです。なぜ英米文学とは無縁なスポーツのディレクターをしているのかと聞かれることがありますが、今あるものから社会を読み解くことにおいてはどの分野でも同じですし、そういう状況を習慣的に考えられるのも先生のおかげです。違う方向へ進んでしまった時も、先生の導きがあったからいるべき場所に戻れた。先生やゼミの仲間と文学の話、社会の話、恋の話など、延々と議論したかけがえのない時間があったからこそ、今の私がいます。先生は亡くなられてしまいましたが、迷いや悩みがある時、先生ならどう考えるだろうと心の中に問うています。大学受験の際には第一志望の学部への入学は叶いませんでした。硬式野球部のマネージャーも2年で辞めてしまった。就職活動でも苦戦しましたが、メディア業界に進み、スポーツ関係の仕事に就きたいという夢をあきらめなかった結果、大きなご褒美が待っていたと今では実感しています。一見、無駄に思えること、遠回りしたことにも大きな意味があることを知りました。今後はスポーツを通して、アメリカという国を日本に伝えたいと考えています。“ベースボール”と“野球”の違いに代表されるように、アメリカのスポーツは商業的規模が桁違いに大きく、スケールが圧倒的に違います。それを日本にもち帰れたらどんなにおもしろいでしょう。今後は、選手にフォーカスしたドキュメンタリーを作りたいですし、行動力を携えて渡米してきた人たちに、楽しいと思える仕事環境を整え、共に仕事をする夢も描いています。青学を志望する皆さんには、大学4年間で好きなこと、夢中になれることを見つけてほしいと思います。それがいつの日かめぐりめぐって自分の仕事にきっとつながるはずです。「あきらめなくて良かった」と思える日がきっとくる。夢中になれるものを追求することが大切。渡米し、メジャーリーグのディレクターに。未来は無限の可能性を秘めている。今でも心に残るゼミでの出会いと学び。求めれば夢は近づく。エール

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