秋田県立大学 大学案内2019
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 「痩せたいならお米を食べない方がいい」「ダイエットには糖質制限が効果的」みなさんも、そんな謳い文句を聞いたことがあるのでは?確かに糖質を制限すれば、短期間で体重を落とすことは可能。しかしその一方で、長期的には弊害が生じることも指摘されています。それに、大好きなお米を食べたいのに我慢するなんて精神的にも辛いこと。 もし、“食べても太らないお米”があったとしたら、夢のようだと思いませんか?私たちが研究しているのは、そんな夢のようなお米なんです。 通常お米に含まれているデンプンはブドウ糖に分解されて小腸で吸収されます。ブドウ糖は、エネルギー源としては非常に重要ですが、エネルギーとして使われなかった場合、脂肪として体内に蓄積されてしまうので、痩せたい人を悩ませるクセ者になります。 私たちが開発した新しい米は、ブドウ糖に分解されにくい「難消化性デンプン(レジスタントスターチ、RS)」を多く含んでいるので、「高RS米」と呼ばれています。そもそもブドウ糖になりにくければ脂肪もたまりにくい、さらに、食後の満腹感が強いため、ダイエット効果が期待できることから、「ダイエット米」とも呼んでいます。 発見に至ったきっかけは、私がもともと進めていた研究の過程からでした。私の専門はデンプンが作られるメカニズムを解き明かすこと。その研究過程の中で、イネのデンプンの合成に関わる特定の遺伝子が、突然変異によりユニークな性質を持つことが分かったんです。せっかくなら、この発見を多くの人に届けたい。そう思って、商品化への挑戦が始まりました。 商品化するためには、量産しなければなりません。そのために秋田県で育成されている別品種と掛け合わせて、「デンプンの性質がユニーク」という特徴を残しながらも従来の品種と同じくらいの収量を得られるまでに開発を進めました。掛け合わせや選抜は根気のいるもので、研究をスタートさせてからは15年以上の月日が。長年の思いがやっと実り、今年初めて第一弾の「高アミロース米」の品種登録申請が実現。来年にはさらに第二弾の「難消化性デンプン」の含有量が高い「ダイエット米」の申請も控えています。 ダイエット米は、ダイエットが期待できるだけではなく、この米を食べた後の血糖値の上昇が抑制されることが、ヒト試験で証明されています。つまり、糖尿病や血糖値が高めの方、血糖値スパイクの方がこの米を食べることで、血糖値の上昇を抑えられることが期待できます。また、難消化性デンプンは、食物繊維と類似した役割があることが知られており、大腸環境を改善し、便秘改善や大腸がん予防なども期待できます。このように、単に「ダイエットに興味がある」という方ばかりでなく糖尿病や便秘等を患っている方の食事にも活用されるでしょう。そうやって世の中の人の役に立つお米を開発できることは、デンプンの性質を熟知している私たちにしかできないことだと自負しています。MADE INイエ本質を探りながらお米をデザインするVISION生物資源科学部 生物生産科学科藤田 直子 教授 FUJITA Naoko 私は、米の中で「デンプン」がどのように生成されているかについて研究をしています。その過程でデンプンの性質が変化した「変異体」というものに出会い、ダイエット効果をはじめユニークな性質があることを知ったのです。それを活かさない手はない、と私たちの“お米のデザイン”が始まりました。お米の成分からデザインするというのは、デンプンを研究している私たちだからこそできること。日々の研究に上限はなくテーマは尽きません。研究の「たね」が、世の中に出回るようになるのは、まさに、研究の醍醐味。何度も成功と失敗を繰り返し、それが実った時には何にも代えがたい喜びが待っていますよ。PROFILE京都府京都市出身。大阪府立大学大学院園芸農学専攻博士後期課程修了。博士(農学)。科学技術特別研究員、秋田県立大学助手、同助教、同准教授を経て、平成27年4月より現職。趣味はスポーツ(特にゴルフ)。食べても太らない?!夢のお米突然変異が生み出した太りにくい、という性質15年以上を要した夢の証県大発のオリジナル米が商品化へ12

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