東京理科大学 大学案内2018
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 私が担当するのは「アントレプレナーシップ教育」です。アントレプレナーシップとは、起業家の方々が価値創造に向かう上での考え方や姿勢(=マインドセット)のことで、「起業家マインドセット」を指す言葉です。 理系の大学がアントレプレナーシップ教育を行っていることに、疑問を持つ方もいるかもしれません。研究者やエンジニアの卵に、起業家教育など必要ないのではないかと思う方もいるでしょう。しかし、そうではありません。実は、起業家マインドセットは、優れた研究者やエンジニアにこそ欠かせないものなのです。彼らは、誰も考えたことのない領域にどんどん分け入って、全く新たな発想、全く新たな見方を創り出していきます。そして、世の中を一変させるような概念や、画期的な技術を打ち出していきます。新たなビジネス、新たな社会的価値を生み出している起業家と、ある意味では同じなのです。ですから、経営学部では、優れた研究者・エンジニアを生み出すとともに優れた起業家を輩出するために、アントレプレナーシップ教育に力を入れています。 アントレプレナー教育の第一歩は、「失敗を恐れず、まず行動を起こすこと」。Act(行動する)→Learn(学ぶ)→Build(つくる)のサイクルが起業家マインドセットの基本です。ところが日本には、失敗を恐れるあまり、行動の最初の一歩を踏み出せない人がとても多いのです。これからの研究者・エンジニアは、それでは務まりません。私は、勇気を持って行動を起こし、いくつもの失敗を重ねながら、それでも前を向いて仮説・検証を続けていける学生を増やしたい。自分の手元から始め、ステークホルダーを巻き込んでいき、想定外のことをポジティブに捉え、目的と手段をどんどん変えながら突き進んでいける学生を増やしたい。そして、東京理科大学を、起業家を次々に輩出する文化が根付く大学にしたいと思っています。優秀な研究者・エンジニアは起業家マインドセットを備えている大間違いです。むしろ20世紀から数学の進化スピードは急速に上がっていて、新しい数学が次々に生まれています。かくいう私も、まさに「新しい物理理論のための新しい数学」に取り組んでいるところです。ニュートンは、自らが発見した重力理論などを計算するために微分・積分を生み出しました。同じように、これまでにない物理理論にはこれまでにない数学が必要なのです。 「超ひも理論」「超弦理論」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。世界中の学者が注目する現代物理学の最先端理論です。超ひも理論が発展すれば、物理学界の長年の夢である「万物理論(電磁力、弱い核力、強い核力、重力を統一する理論)」が完成する可能性があります。私は今、この理論から予言される新しい数学「非可換幾何」に取り組んでいます。非可換幾何の発展が、超ひも理論や場の量子論の定式化を可能にするかもしれません。可能性を秘めた未踏の領域に、日々ワクワクしながら取り組んでいます。 数学が何より面白いのは、「新しいものの見方」ができる点です。超ひも理論のミクロ世界は決して目に見えませんが、数学なら扱うことができます。そして、超ひも理論や非可換幾何を通して眺めると、世界は全く違って見えてくるのです。その見方を味わえるのは、数学の大きな魅力ではないでしょうか。 私が手がける「数理物理」とは、物理学と数学の中間に位置する学問です。例えば、素粒子物理で最も重要なツールの一つに、「場の量子論」があります。非常に完成度が高い理論で、ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎博士等の技法である「くりこみ」などを使って、量子論的に精緻な計算を行えます。しかし「場の量子論」は数学的にはいまだに定式化されていません。場の量子論を解くには「新しい数学」を生み出す必要があり、今も世界中の数学者が必死になって考えています。 「数学は完成していて、あとはただ計算するだけだ」と思っている方がいたとしたら、教育数学・数理物理新たな物理理論には「新たな数学」が必要message若い方々には、ぜひ常識を疑い、疑問を持ち続けていただきたいと思います。「なぜ世界は四次元なのか?」「宇宙の外側はあるのか?」など、世界はまだまだ謎だらけです。それを解くのは皆さんです。疑い」れ5FRONT LINE of theworld3876FRONT LINE of theworld387佐古 彰史 准教授理学部第二部 数学科KEYWORDアントレプレナーシップ、イノベーション牧野 恵美 准教授経営学部 経営学科KEYWORDmessage大事なのは、自分探しではなく、「自分づくり」です。海外に飛び出すのも、ボランティアなどに参加するのもよいと思います。若いうちに思いきってチャレンジし、自分の価値観や志を育んでいただきたいと思います。はでのに参いきっの価た8

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