東京理科大学 大学案内2018
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 現代物理学に少しでも興味のある方なら、ミクロ世界では「量子現象」が起こっていることをご存じでしょう。量子現象は、私たちの生きるマクロ世界では見えないと思っている方が多いかもしれません。しかし実際は、マクロ世界でもさまざまな量子現象を発見できます。例えば、「磁石」です。磁石の持つ「磁性」は、実は量子現象です。このようにして、ミクロの量子現象がどのようにマクロ世界に影響を及ぼしているかを研究するのが、私が専門とする「物性物理学」です。「超伝導」という言葉を聞いたことはあるで しょうか。特定の物質をかなりの低温にすると電気抵抗がなくなる現象のことで、これも量子現象です。超伝導は、さまざまな技術に応用されています。例えば、10数年後に走る予定の「超伝導リニア」新幹線は、文字通り超伝導を使った乗り物です。また、病院にある「MRI」(体の臓器や血管などを撮影する検査方法)も超伝導電磁石を利用しています。 多くの物質は、-196℃の液体窒素温度よmessage実験結果をどう考えれば理解できるのかを、計算によって明らかにするのが、私たちの研究の醍醐味です。さらにいえば、実験の前に計算を終えて理解してしまい、実験結果を先取りして予測できたら最高です。りもっと低温で冷やしてようやく超伝導になりますが、それより高い温度で超伝導が起こることがあります。「高温超伝導」と呼ばれる現象です。リニアやMRIなどに応用する際、超伝導をより手軽に実現できるため、高温超伝導は世界的に注目されています。 私の研究室でも今、高温超伝導の研究に力を入れています。その他、量子スピン系、非平衡ダイナミクス(光スイッチ)、トポロジカル量子相などを研究しています。これらすべての研究に共通するのが「強相関電子」で、物質の中で相互作用しながら運動している電子です。そのような電子がたくさん集まると、通常とは全く違う大変複雑な現象が起こるのです。それは、日本が誇るスーパーコンピューター「京」で計算しなくてはならないほど複雑ですが、その複雑さの中に簡潔な原理がきっと隠されています。それを見つけ出すのが、私たち研究者の目標であり、楽しみです。シンプルな原理を発見したときの嬉しさは、他には替えがたいものです。ば理によ、私す。前にしまして。複雑な物理現象の中に簡潔な原理を見つけ出したいmessageうつ病だけでなく、世の中には「まだ分かっていないこと」がたくさんあります。ですから、簡単に分かった気にならず、ぜひ「分からなさ」を追求し続けてください。それこそが、学習や研究の原動力になるのですから。すっひ追い習な機構と捉える「生体制御学」の立場から、私なりのメカニズムの仮説を立てているのです。それは「神経機能の若返り仮説」というものです。脳には、記憶や空間学習能力に関わり、脳神経を新生する役割を果たす「海馬」という領域があります。うつ病になると海馬が小さくなり、神経新生が少なくなるのですが、うつ病治療を行うと神経新生が促進されることが明らかになっています。このとき、海馬の成熟神経の若返りも同時に起きていると考えています。さらに言えば、他の脳領域でも神経が若返っていると推測しています。目下、私はこの仮説の検証を進めている最中です。 うつ病は1990年代から急増し、今も増え 「うつ病は、実は解明されていないことだらけ」と言ったら驚くでしょうか。しかし、それが真実なのです。うつ病の原因が何なのか。うつ病患者の脳に何が起こっているのか。うつ病治療で脳がどのように回復しているのか。これらのメカニズムの全容は解き明かされていません。そのため、他の多くの病気とは違って、「脳のあの部分がこうなっていたら、うつ病である」というような客観的な診断指標はまだ存在しません。現在は、問診と各種検査から総合的に判断するほかない状態です。 私は今、うつ病治療を切り口に、脳のメカニズムを研究しています。生体を一つの調節続けています。なぜなら、うつ病は予期しないストレスが多いときに発症しやすい病気だからです。社会や技術の進化スピードがどんどん上がり、ますます先が読めない世の中になっていますので、今後も自然に減るとは考えにくいです。うつ病を減らすには、そのメカニズムを解明して、より良い治療法を確立するほかに方法はありません。私の研究が役立ち、貢献できたら嬉しい限りです。 うつ病には複数の病因があり、変化する脳領域も人によって違うため、その全貌を解明することは大変ですが、私はその「分かりに分からないことの多いうつ病 良い治療法の確立を目指すくさ」を追求することこそが研究者の醍醐味だと思います。2FRONT LINE of theworld387日々、神経新生などを調べるために、神経細胞を切り出してさまざまな刺激を加えながら顕微鏡をのぞいている。3FRONT LINE of theworld387瀬木 恵里 准教授基礎工学部 生物工学科海馬・視床下部・うつ治療・食欲・遺伝子発現制御遠山 貴巳 教授理学部第一部 応用物理学科量子論を用いた固体物性理論KEYWORDKEYWORD6

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