東京理科大学 大学案内2018
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て、その働きを止めたり強めたりするからです。 ところが一つの新薬の開発には100億円以上の費用と、10年以上の年月がかかります。それは、数千種類もある薬の候補の化合物の中から、特定のタンパク質に結合する物質を見つけ出すのに、非常に時間と手間がかかるからです。 近年の創薬研究ではコンピューターを用いて、タンパク質と化合物の結合をシミュレーションする手法が盛んに行われています。しかし、数万種類のタンパク質と数千種類におよぶ化合物をどう組み合わせるかは、研究者の経験と勘に頼っているのが実情です。 そこでわれわれはすでに薬効があると分かっている化合物を、分子量、構成原子、疎水性など約60のパラメータにデータベース化して「機械学習」を行い、全くターゲットのタンパク質の構造が分からなくても結合させたときに薬として有効かどうか、可能性を判定できるソフトを開発しました。 機械学習とは「すでに分かっているデータ」の中から、そこに潜むパターンを見つけ出すという、人間が自然に行っている学習方法をコンピューターで実現する手法です。 創薬と機械学習を組み合わせることにより、膨大な「無駄な実験」の手間を減らし、将来的には大幅に創薬のコストを削減できるのではないかと考えています。ソフトの開発は薬学部と理工学部の大学院生が主導しました。東京理科大学ではこのような学部の垣根を越えた、社会に大きなインパクトをもたらす可能性がある研究が多数行われています。 ここ数年で囲碁や将棋のトップレベルの棋士すらも打ち負かすほどに成長を続ける人工知能(AI)。私たちはその思考プロセスを支える「機械学習」という手法を使って、「創薬」のスピードを劇的に速める共同研究を進めています。薬が効果を発揮するのは、細菌やウイルスなどの病原体や、人体内の酵素が持つタンパク質と、薬に含まれる化合物が結合しmessage私たちの人工知能(AI)に関する研究は、すべて「応用」を視野に入れています。ある学生はAIで手術後の患者さんの活動量を分析し、別の学生は乳牛の健康管理への応用を検討しています。そうした「現場」との触れ合いが新しいアイデアを生むのです。関」るさ学用たしmessage共同研究で大切なのは「密なコミュニケーション」。専門が違えば、使われている言葉も研究に必要な知識もまったく異なります。「分かったフリ」をせずに、自分と違う分野の研究と触れ合うことが大切なのです。切データマイニング「機械学習」により莫大な新薬の開発コストを劇的に削減する 共同研究とは各学問分野の研究者が一つのテーマに向かって、分野の枠を超えて研究を行うことを共同研究といいます。共同研究によって生まれる相乗効果は、理工系総合大学として私学随一の規模を誇る学部学科・大学院組織と、豊富な研究領域を持つ、東京理科大学ならではの強みです。7FRONT LINE of theworld3878FRONT LINE of theworld387大和田 勇人 教授理工学部 経営工学科KEYWORD生物有機化学・超分子化学・創薬青木 伸 教授薬学部 生命創薬科学科KEYWORD9

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