東京工科大学 大学案内2019
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応用生物学部では最先端のバイオテクノロジーを基盤に、生命科学の応用分野をリードする革新的研究を推進しています。研究の主体となる各研究室では、さまざまな企業や学術・研究機関の第一線で卓越した実績を持つ教員が研究を推進しており、実用的な研究成果を次々と生み出しています。より安全で効果の高いバイオ医薬品創製を支える技術を開発細胞制御研究室 (今村 亨 教授)生物創薬研究室 (佐藤 淳 教授)本研究では、ブタプラセンタエキスの製造工程において加熱などの過酷な処理を行った後も、胎盤組織内にもともと存在するシグナル分子が活性を示すことを明らかにした。研究成果レポート新たな機能性化粧品の開発につながる成果化粧品やサプリメント、医薬品の材料として、動物の胎盤を原料とする「プラセンタエキス」を使った製品が広く普及しています。胎盤を美容や健康を目的として利用してきた歴史は長く、紀元前の古代ギリシャ時代には既に使われていたとも言われています。しかし、「プラセンタエキス」の「何が」「どのように」作用するのかという活性メカニズムについては、多くの不明な点が残されていました。そこで、当研究室では、化粧品原料の主流となっているブタプラセンタエキスの中の「FGF」というシグナル分子群に着目し、その活性を検証する研究を行いました。シグナル分子とは、細胞の増殖・分化などを調節する指令を出す分子で、その中の一群である「FGF」は、皮膚の健常性の維持、傷の治癒、さらには毛髪の成長促進など、多面的な働きをします。私たちは、この「FGF」の指令を受けて細胞に伝える「受容体」の活性化を解析できる細胞を複数作成。これにブタプラセンタエキスを加えて活性を調べることで、このエキス中にFGF活性を発揮する物質が存在することを世界で初めて明らかにしました。この成果は化粧品業界などから強い関心を集めており、今後、美容や健康に役立つ新たな機能性化粧品やサプリメントなどの創製への応用が期待されています。副作用の低減と、血中安定性の向上を両立現在の新規医薬品の市場では、遺伝子組換えなどのバイオテクノロジーでつくられる、タンパク質を主成分とした「バイオ医薬品」が主流になっています。タンパク質は体の中で壊れやすい性質を持っていますが、これを壊れにくくしたり、また体外に排出されにくくして「血中安定性を高める」、すなわち安定して効果を発揮するようにするために、遺伝子組換えにより、タンパク質と体内の免疫に関わる「抗体」の一部を融合させる技術が、がん治療薬などで使われています。しかし、こうした融合でつくられるバイオ医薬品は、体内に入った異物を抗体が攻撃するように、患者の細胞を攻撃してさまざまな副作用を起こす可能性を有しています。そこで当研究室では、バイオ企業と共同で副作用のリスクを抑えながら、高い血中安定性を実現する、タンパク質と抗体の新しい融合技術を開発しました。これは「ヒトラクトフェリン」というタンパク質に、遺伝子組換えで形を変えた抗体の一部を融合する技術で、優れた血中安定性を有しつつ副作用のリスクが少ないことを実証し、2017年には特許を取得。より安全で薬効の高いバイオ医薬品開発に役立つ技術として注目されており、私たちの研究グループでも、現在有効な薬がない「敗血症」をターゲットにした新規治療薬の研究開発を推し進めています。遺伝子組換えにより、抗体の一部とタンパク質を融合した従来型の融合タンパク質(図左上)と、本研究で作成した抗体の一部の形を変えた融合タンパク質(図右上)。後者は血中安定性が高く、副作用も少ない。化粧品材料「プラセンタエキス」の活性成分を明らかにSchool of Bioscience and Biotechnology71TOKYO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY応用生物学部

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