東京工科大学 大学案内2018
71/144

研究成果レポート応用生物学部では最先端のバイオテクノロジーを基盤に、生命科学の応用分野をリードする革新的研究を推進しています。研究の主体となる各研究室では、さまざまな企業や学術・研究機関の第一線で卓越した実績を持つ教員が研究を推進しており、実用的な研究成果を次々と生み出しています。メチル化DNAの簡易計測法の開発紫外線と肌乾燥のメカニズムを解明ローズマリー由来の物質がアルツハイマー病を抑制することを発見DNAを構成する塩基のひとつであるシトシンは生体内でメチル化され、このメチル化が遺伝子の発現を制御する「遺伝子スイッチ」の働きを持っており、がん細胞では、この「遺伝子スイッチ」が異常になっていることが確認されています。生命機能応用研究室では、がんのバイオマーカーとして期待される「DNAメチル化頻度」の測定を、従来よりも簡便に行える方法の開発に取り組みました。着目したのは、四重鎖構造を形成する特定の配列を持つDNAで、これがメチル化されると、PCRで増幅させた場合、その増幅効率が減少することを発見しました。この知見を生かせば、従来に比べ簡便にがん関連遺伝子のメチル化頻度を測定できるため、がんの簡易診断への応用が期待できます。また、がんだけでなく生活習慣病やうつ病といった疾患の簡易診断への応用の可能性も広がります。太陽光線がシミやシワに代表される肌の老化の原因になることはよく知られています。こうした肌の老化には、変質したタンパク質である「カルボニルタンパク」が関わっていることもわかっていましたが、その因果関係やメカニズムの詳細は知られていませんでした。そこで光老化研究室では、皮膚の角層中のカルボニルタンパクが保湿機能を低下させるという仮説のもと、その検証に取り組み、世界初の知見を獲得しました。明らかになったのは、肌に紫外線を照射すると活性酸素が生成されて角層細胞内タンパクの「カルボニル化」が促進され、それにより、さらに活性酸素の生成が進んでカルボニルタンパクが増え、肌の乾燥を引き起こすという「生成ループ」の存在です。本研究の結果は、化粧品・日焼け止めの開発に役立つものとして、化粧品業界からも大きな注目を集めています。アルツハイマー病は、記憶の中枢の海馬を中心に脳に広範な変性が起こる病気で、老化などによるベータアミロイドと呼ばれるタンパク質の異常蓄積が原因とされています。アンチエイジングフード研究室では、米国シンテロン研究所との国際共同研究により、ローズマリー由来のテルペノイド(イソプレンを構成単位とする一群の天然物の総称)である「カルノシン酸」のベータアミロイドタンパク質の沈着と神経変性を抑制する効果を検証しました。その結果、カルノシン酸を経口投与したマウスで、特に海馬の神経細胞におけるベータアミロイドタンパク質の沈着が減少することを発見するとともに、神経細胞の変性が抑制され、記憶機能を回復させることも確認しました。現在、この成果の医薬品や健康食品、治療法開発などへの応用をめざす研究が進められています。軽部 征夫 教授・吉田 亘 助教佐藤 拓己 教授正木 仁 教授生命機能応用研究室アンチエイジングフード研究室光老化研究室本研究で開発したメチル化DNA検出方法海馬の神経細胞にベータアミロイドを添加した場合(左画像)は、赤色の神経細胞が消失したが、カルノシン酸を同時に添加した場合(右画像)はその消失が抑制された。カルボニルタンパクの増加カルボニルタンパクの光増感反応活性酸素の生成乾燥皮膚紫外線皮膚の乾燥を誘導するループ69TOKYO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY応用生物学部

元のページ  ../index.html#71

このブックを見る