岡山大学 大学案内2018
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8 OKAYAMA UNIVERSITY 2018 特集4ーがん治療の明日特集4 がん治療の明日 BNCTの原理 天然のホウ素は質量比で約80%を占める11Bと約20%の10Bの同位体で構成されています。このうち、10Bは中性子を捕獲して核反応を起こす断面積が大きいことが知られています。この反応によってα粒子(He原子核)と7Li粒子が発生します。これらの粒子放射線のエネルギーは大きく、飛距離が4~9μmと細胞一個の大きさより小さいので、がん細胞に10Bが導入されていれば、これら粒子線のエネルギーでがん細胞のDNAを切断して殺傷することができます(図1参照)。BNCTは 1~2回の照射でがん細胞のみ殺傷し、隣の正常細胞は損傷しないので、患者の皆様の生活の質QOLが極めて良好に保てます。図1.BNCTの原理 BNCTの歴史 中性子は1932年J. Chadwickにより発見され、その4年後の1936年に米国のG.L. LocherによりBNCTの可能性が提唱されました。1951-1961年には米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)の医療用原子炉BMRRで臨床適用されました(63例)。しかし、ホウ素をがん組織に選択的に蓄積することが出来ず、また、原子炉由来の中性子の性質が適切でなく、期待した効果を得られずに中止されました。日本では畠中 坦(帝京大学)によって臨床研究が辛抱強く続けられました。1968年に日本で最初の医療照射が日立炉HTRで行われました。その後、日本原子力研究開発機構や京都大学の原子炉を用いた治療研究が実施されてきました。中性子源については、上記の原子炉由来の中性子を利用する方法と、加速器で陽子を加速してターゲット(7Liまたは9Be)に当て、発生する中性子を利用する方法があります。現在は、病院設置が可能な加速器型BNCTに機器開発の重点は移っています。京都大学原子炉実験所では住友重機械工業と協力し、2008年に中性子医療研究センターが発足 岡山大学は戦略的研究経営システム改革の一環として、文部科学省や岡山県北・鏡野町の協力を得て、平成29年4月1日に「中性子医療研究センター(Neutron Therapy Research Center: NTRC)」を発足させました。このセンターでは、がん治療の未来を切り開く『ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy: BNCT)』の先端的研究を実施し、特に優れたホウ素薬剤を開発して患者の皆様に提供することを目標にしています。このため、放射線治療の世界基準を定める国際原子力機関IAEA、世界標準となる新世代の加速器型中性子発生装置を開発中の名古屋大学、ドイツ・Duisburg-Essen大学、イタリア・Pavia大学等の国内外の一線級の研究者の力を集約します。がん治療の 明日

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