大阪大学 大学案内2019
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よくある質問?!熊ノ郷先生はどんな高校生でしたか?将来への夢や不安がごっちゃになりながらも楽しい高校生活でした。受験年は必死で勉強しました(笑)。QA特集教育システム教育環境インフォメーションPerson 免疫は、「疫(病気)を免(まぬが)れる」ため、私たちが生まれながらにしてもっている体を守る仕組みです。免疫が破綻すると、喘息、アトピーなどのアレルギー疾患や、関節リウマチ、バセドー病などの自己免疫疾患の原因となるばかりでなく、エイズ、インフルエンザ、結核などの感染症の脅威をもたらします。医療技術の進歩により行われるようになってきた臓器移植や再生医療の際の、移植した臓器や組織に対する拒絶反応も免疫反応です。また、がんも免疫の監視を逃れたがん細胞が人間を死に追いやると考えられています。したがって、免疫をいかに適切に維持し制御してやるかが、アレルギー、自己免疫病、感染症、がんなどの難病から人を守り、よりよい健康・安全社会を構築していくために大切なのです。現在、世界の薬の売り上げ上位を免疫に関連した免疫調節薬が席巻しているのも、それだけ免疫が病気に密接に関連していることを示しています。 本学の免疫研究は、免疫の理解と臨床応用において多大な貢献をしてきました。とりわけ、「サイトカインの発見とそれを制御する薬剤の開発」「制御性T細胞の発見とがん免疫への応用」「自然免疫活性化機構の解明」は、学問としての生命科学領域だけでなく、病に苦しむ患者さんへの臨床応用においても、今日大きなインパクトを与えています。たびたび、医学を志している若い人たちから、「基礎」をするか、「臨床」をするか、と将来の進路相談を受けます。実際、一般には「基礎研究」と「臨床医学」には大きな溝があると言われています。ところが、こと免疫学においてはその通念は当てはまらず、つねに「基礎研究」(縦糸の医学)と「臨床医学」(横糸の医学)が並行し、互いに密接に絡み合いながら、糸を紡ぎながら発展してきたことは、世界の免疫研究が証明しています。私自身のキャリアも、ある時期は臨床、ある時期は基礎、そして今は基礎も臨床も両方まとめて仲間と一緒に行っています。免疫学においては「基礎研究」とその「臨床医学」がつねに二人三脚で実践されてきた歴史があり、本学には裾野広く、幅広い領域の免疫の研究者、技術者、医学研究者、臨床医、医療従事者がそれぞれの切り口でお互い協力し、切磋琢磨しながら、病に苦しむ多くの患者さんに福音をもたらす診断・治療につながる成果を目指す素晴らしい環境があります。疫(えき、病)を免れるための仕組みを探求する「免疫学」。~大阪大学の免疫研究は日本の看板学問~ 「病は気から」という格言はよく知られていますし、「栄養をとらないと抵抗力が落ちて病気にかかる」ということも昔からよく知られています。これを医学用語に置き換えると「神経と免疫はクロストークしている」、「代謝は免疫に影響を及ぼす」となります。ところが、実際にどういう物質がこの仕組みに関わっているのか、ということは長らく不明でした。私は大学院を卒業後、日本の感染症研究のメッカのひとつでもある大阪大学微生物病研究所に移りました。その際、ワクチンを何度接種しても抵抗力(免疫力)がつかない病気(免疫不全症)の原因を探索する中で、セマフォリンと呼ばれるたんぱく質の1つを見つけました。当時、セマフォリンはお母さんのお腹の中にいる時期に神経の発生に関わると考えられてきたたんぱく質群でした(20種類あることが知られています)。そこで不思議に思って詳しく調べていく中で、免疫にとても大切な物質であることを突き止めました。さらに調べていくと、神経と免疫双方で働いているようなセマフォリンは1つではなく10個以上あり、芋づる式に次々と新しいセマフォリンが見つかり、アレルギー疾患や自己免疫疾患、さらにはがんの病態にも深く関与していることがわかってきました。また最近では、神経と免疫だけでなく、肥満などの代謝系を司っていることまで明らかになってきています。このような研究生活の中で、病気と真正面から向き合う機会を2011年に得て、再び医学部の臨床教室であり出身教室でもある「呼吸器・免疫内科学教室」に戻りました。ここではセマフォリンだけでなく、がん、アレルギー、自己免疫に関わる研究を幅広く行っています。 最近の大きな話題は、「がん免疫療法」が新たながん治療の柱となったことです。私たちの教室でもがん患者さんに対し、「チェックポイント抗体療法」という最新のがん免疫療法を実践し、最大限の治療効果を生むための努力を行っています。さらに今の医学では治せない患者さんを治すべく、ハイレベルな免疫学の研究成果を応用して新しい「がん免疫療法」の開発を行っています。最近、そのひとつの成果として多発性骨髄腫という血液がんに対する「CAR-T細胞療法」という新しい治療法も開発しました。まだまだ研究レベルではありますが、今後、臨床にしっかりとつなげていきたいと思っています。神経と免疫、さらに代謝をつなぐ仕組みを発見。Sema4Aが体にないと、アトピー性皮膚炎や喘息を発症する。セマフォリンは神経・免疫・代謝を結び付けている。がん免疫療法の臨床と新しいがん免疫療法の開発7

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