大阪大学 大学案内2018
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特集教育システム教育環境インフォメーションPersonPersonよくある質問?! この宇宙、星、そして人間、すべての物質、これらは何からできているのでしょうか?小さく小さく切り刻んでいくと、最後にはもっとも小さい構成要素まで行きつくのでしょうか?そもそも、そのような物質の入れ物である「空間」は、何で作られているのでしょうか?空間はなぜ、縦・横・高さの3次元で構成されているのでしょうか? これらの問いは、たいへん突拍子もないものに聞こえます。しかしこれらは、基礎科学のもっとも先端に位置する「素粒子物理学」で研究されている科学の問いなのです。私の研究は、これらの究極の問いに答えるべく、素粒子の性質を解き明かしていくことです。 私たち人類はこの1世紀の間に、宇宙を構成する物質の起源について驚くほど英知を発展させてきました。宇宙にある物質は原子から成り、原子は原子核と電子から成っています。原子核は陽子と中性子から成り、そして陽子と中性子はクォークから成っています。それ以上分割することが実験的にできていない構成要素のことを、私たちは「素粒子」と呼んでいます。現時点で、17種類の素粒子が発見されています。真に驚嘆すべきは、この宇宙のすべての物質(暗黒物質と呼ばれるものを除く)が、発見された17種類の素粒子で構成されているはずである、と私たち人類が信じる段階まで来ており、そしてそれら17種類の素粒子は、たったひとつの数式で表されていることを私たちが知っていることです。 この“宇宙を記述するたったひとつの数式”は、ひと言で言うと、それぞれの素粒子に運動方程式を与える親玉の数式のようなものです。「素粒子の標準理論の作用」と呼ばれるこの数式は、あらゆるものを支配しています。いまこの文章を読んでいるあなたの手の動きも、脳の中の信号も、すべてです。そんなたったひとつの数式を人類はすでに知っているのです。人類がたどり着いた、ひとつの数式と17種類の素粒子。高次元空間を可視化したもの[6次元のドーナツ型の空間の切り口](「超ひも理論可視化プロジェクト」より) では、素粒子物理学は完成したのでしょうか? 答えはNOです。素粒子物理学はさらに新しいステージを迎えています。つまり、はじめに述べた問いを科学的に考え、答えを出せるステージに来ているということです。 この宇宙には17種類の素粒子があることがわかっています。しかし、なぜ17種類なのでしょうか?17種類には電子や光も含まれますが、ご存知のように電子と光はまったく性質が違います。例えば、電子は電流の元となり、消え失せることはありません(電子の反粒子として知られる陽電子との対消滅を除く)。しかし、光は放出されたり吸収されたりします。このような違いはどこから来ているのでしょうか?じつは、これらの違いはすでに「素粒子の標準理論の作用」の数式に書き込まれているのですが、問題は“なぜ「素粒子の標準理論の作用」が、そのような形をしているのか”ということなのです。この問いに答えた人はいません。 最近、素粒子物理学の研究は飛躍的に進んできています。空間の次元を与える問題について、“次元とは、そもそも状況によって数が異なり、違う次元の物理現象がまったく同じものである”という「ホログラフィー原理」と呼ばれるものが発見され、理論的に確かめられています。この問題は、アインシュタインの重力理論とシュレーディンガーやハイゼンベルグの量子力学を統合する、という前世紀からの物理学の宿題を解決すると考えられています。これらの、素粒子とは一見異なるアプローチは、「超ひも理論」と呼ばれる理論仮説から導き出されてきました。超ひも理論は、すべての素粒子が小さな「ひも」から構成されているとする仮説です。私の研究のメインストリームは、超ひも理論を用いて、空間自体がどのようにでき上がるのかを解き明かすことです。さまざまな空間次元の現象がどのように関係しているのかが、一つひとつ解き明かされるのにワクワクします。 2012年には素粒子に質量を与える「ヒッグス粒子」が実験で発見され、2016年には重力を伝える波である「重力波」が観測されました。素粒子物理学は、人類の究極の問いに答えを与える段階に来ているのです。超ひも理論で、空間の成り立ちを一つひとつ解き明かす。橋本先生はどんな高校生でしたか?友だちとの会話に、脊髄反射で笑いころげる毎日を送っていました。好きな教科書は、地図帳。QA17種類の素粒子宇宙のすべてを記述する「素粒子の標準理論の作用」5

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