大阪大学 大学案内2018
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特集教育システム教育環境インフォメーションPersonPersonよくある質問?! 私たちの身体を作っている細胞のなかにはひとつの宇宙があり、社会にも例えられます。なかでも「細胞内小器官(オルガネラ)」と呼ばれる、膜でできた袋状の構造はリサイクル工場や発電所の役割を担い、その間を数万種類のタンパク質が人間のように往来し、忙しく働いて細胞の生命活動を維持しています。この細胞内社会では毎日、「オートファゴソーム」と呼ばれるパックマンのようなオルガネラがいくつも作られ、タンパク質や他のオルガネラを少しずつ包み込んで分解しています。これが「オートファジー」です。オートファジーはギリシャ語で「自分を食べる」という意味。細胞が、自分を食べているのです。タンパク質の分解によってできたアミノ酸はリサイクルされ、新しいタンパク質になります。オルガネラも新しいものが作られます。こうして細胞は日々中身を入れ替えてリフレッシュ(新陳代謝)しているのです。ところがこの働きが滞ると、壊れたオルガネラや働かなくなったタンパク質の塊などが細胞内にたまり、細胞の機能が損なわれたり細胞が死んでしまったりします。オートファジーはまた、細胞のなかに病原性細菌が侵入してきたり、何かのせいでオルガネラが壊れたりすると、それを積極的に包み込んで処分してくれます。これらの働きを通して細胞の健康を守っており、オートファジーが低下すると、がん、アルツハイマー病、心不全、糖尿病、感染症、炎症などさまざまな病気が起こることがわかってきました。 そもそもオートファジー自体は50年以上も前に発見されていましたが、研究はなかなか進みませんでした。その状況を破ったのが大隅良典博士(現・東京工業大学栄誉教授)です。大隅博士は、1993年に酵母の研究からオートファジーに必要なタンパク質Atgをいくつも発見しました。それがきっかけとなってオートファジーの理解が急速に進んだのです。その功績により、大隅博士は2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞されました。私は、1996年に大隅博士が基礎生物学研究所で研究室を立ち上げられたときに助教授として呼ばれました。その研究室で、大隅博士の酵母での発見を哺乳類に拡大。一例を挙げると、オートファゴソームが作られる様子を、生きている哺乳類細胞で観察できるようにしたのです。この、いまでも汎用される方法を記した私たちの論文は、オートファジー分野で一番多く引用されています。こうした努力の結果、哺乳類オートファジーの研究が世界中で盛んになり、上述のように健康維持にとても大事だということが明らかになったのです。そのことも、大隅博士のノーベル賞受賞を後押ししました。その後も私たちは、病原性細菌をオートファジーが殺すことを発見したり、オートファジー分野で最大の謎として論争が何十年も続いていたオートファゴソームがどこで作られているのかを突き止めたりするなど多くの成果を上げ、この研究分野の発展に貢献してきました。健康維持に不可欠な生命現象「オートファジー」とは。 オートファジーはこの20年間に大きく研究が進み、ノーベル賞の対象にもなりました。しかしまだまだ謎が多く、おそらく全体の1割ほどしか解明されていません。とくに、病気にどう関わっているのかは不明な点が多いのです。 私たちはいま、本学医学部に設置されたオートファジーセンターで、臨床の先生たちと一緒にオートファジーと病気の関係を詳しく調べ、治療法の開発に役立てようとしています。例えば消化器内科との共同研究では、高脂肪食によって脂肪肝という病気が起きる原因を解明しました。私たちが発見したRubiconというオートファジーを抑える働きがあるタンパク質が、高脂肪食により肝臓で増加してオートファジーを低下させてしまい、その結果、肝臓の細胞のなかの脂肪が分解されなくなり脂肪肝になっていたのです。この結果から、Rubiconを減らせば脂肪肝の発症を抑えられる可能性が出てきました。 オートファジーが関係する心不全などの他の病気についても研究を進めています。さらに、オートファジーが寿命を延長することもわかってきました。今後は、その仕組みの解明も目指していきたいと思っています。オートファジーセンターを拠点に、治療法の開発などに挑む。吉森先生はどんな高校生でしたか?勉強以外に興味のあることが多すぎて、落ちこぼれていました。QAオートファジー研究の歴史と関係論文数の推移。近年になり、急速に研究分野が拡大している。【オートファジーの膜動態の模式図】細胞質やオルガネラの一部を隔離膜が包み込み、オートファゴソームとなる。そこにリソソームが融合し、オートリソソームが形成されると、取り込まれた内容物が分解される。左/細胞内に侵入した細菌を捕獲するオートファゴソーム。右/マーカーを使った蛍光観察で、細菌(ピンク)がオートファゴソーム(緑)に包まれているようすが明らかになった。9

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