金沢美術工芸大学 大学案内2017
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畝野 裕司(環境デザイン)大学着任以来、デザイン教育の一環として産学連携プロジェクトに力をいれています。2013年からDNPメディアクリエイト様と協力して、デジタル雑誌アプリ「kanavi(カナビ)」を制作しています。地域の新たな魅力を創出し、地域から発信していく手段としてデジタルメディアの可能性に着目しました。地域からの情報発信といっても、もともとそこに住んでいる人は自分たちの地域の良さを認識していないことが多いものです。学生たちは県外から金沢に移り住んできたため、新たな視点から金沢の魅力を発見し、そこで体験したことを「kanavi」で発信しています。金沢の重要な観光資源である伝統工芸に対しても、美大生ならではの作り手に寄り添った視点からとらえようとしています。研究を継続していくなかで、学生ならではの視点で金沢の良さを伝えることの大切さを再認識しました。学生にとって、この産学連携の取り組みを通して、金沢をより深く知るきっかけになり、知りたいと思って取材してみる。好奇心がわいてきて伝えたくなる。そういう、よい循環が生まれてきています。金沢発の新しいデジタルマガジンがスマートフォン世代に浸透していき、近い将来、地方からの有力な発信媒体として注目を浴びることになることを期待しています。大谷 正幸(一般教育等)学部の頃には放射化学、製薬会社にて薬物動態学、大学院では電気化学と、複数の専門分野の研究に携わってきました。そして、金美にて理系の一般教養科目を担当するにつれ、エネルギー事情への懸念から文明の行く末を考えずにはいられなくなり、近頃は「エルゴソフィ」に傾倒しています。エルゴソフィとは、ノーベル賞科学者F.ソディが提唱した概念で、「エンジニアの視点から考える経済学、社会学、歴史、および純粋に物理学的な意味での仕事、エネルギー、仕事率に関連づけられた知恵」のことです。どの分野に進むにせよ、資源・エネルギーの減耗という時代の宿命を直視して、どう凌いでいくか、知恵を絞らねばなりません。今更ながらJ.S.ミルが『大学教育について』に掲げていた諸科学の「体系化」の重要性を痛感している次第です。青木 千絵(工芸)工芸ではまず素材の特性や技法の基礎を丁寧に学ぶことから始まります。その中で、歴史的な技法や自分自身が惹かれる素材の魅力に出会い、自らの思考とリンクさせ研究を深めることで作品が生まれます。そこには、素材への強いこだわりと愛着も同時に生まれてきます。私は漆造形による人体表現をテーマに作品制作を行っています。漆の伝統的技法である乾漆技法と人体という普遍的な課題を融合させ、人間の哀しみや存在に焦点を当てて新たな表現の可能性を探求しています。漆の強く美しい艶には、多くの工程が必要であり丁寧で丹念な仕事が隠されています。私の作品は人体をリアルサイズで制作することを一つのこだわりにしているため、必然的に大型なものになります。これには気の遠くなるような作業を伴いますが、不思議なことに漆に対するさらなる愛着が湧き、何より自分自身と向き合う思考の時間でもあります。今では自然素材である漆を使い、人の手によって一つの作品を作り上げることに強い喜びを感じています。私は、学部の頃から同じテーマで作品を作り続けていますが、学生時代にこのテーマに行き着いたこと、そして作品を通して多くの人と繋がったことが、現在の作家活動の基盤になっています。工藤 俊之(視覚デザイン)気がつけば今年で20回目となるダンボール展。大学卒業後アートディレクターとして写真家やイラストレーター、作家を探すなかで、「もしかして自分も作家なんじゃない?」とつねづね感じていました。大学に教員として戻ってきて、視覚デザインの学生にも作家の才能があるんだということを気づかせるために始めた課題だったのです。2年目には「あっこれ展覧会にした方がいいかも」と思いました。展示会場も集会ホールから始まって展示ホール、アートベース石引へ、そして金沢市から予算をつけてもらって金沢市民芸術村、金沢駅もてなしドーム地下イベント広場へと成長してきました。あと5回やらせてください。この展覧会とともに卒業です。根来 貴成(製品デザイン)「Hospitality Chairs」~待ち時間を豊かにする椅子~をテーマに、公共空間における新たなデザインの可能性を探求しています。2011年~2012年、金沢市立病院とホスピタリティアート・プロジェクトの一例として病院の椅子のデザインに取り組みました。これらの椅子は、患者やその家族が診察を待っている間、くつろぎや癒しを通して待ち時間を楽しむことができます。機能性だけではなく、形や色、サイズの工夫によっても患者のストレスや不安が軽減されます。また、2013年~2015年には、石川県立音楽堂とホスピタリティラウンジ・プロジェクトに取り組みました。機能性と音楽性がもたらす癒しの形が融合した魅力的な椅子が多く生まれました。この活動を通して、医療分野や公共施設における製品デザインの新たな可能性と教育への発展に手応えを感じています。金沢市立病院/石川県立音楽堂での展示人気投票1位の椅子の細部JID AWARD 2015 NEXTAGE部門賞受賞《BODY16-1》2015かなざわエコライフキャンペーン金沢のアートや生活クラフトを紹介するデジタルマガジンISBN-10:4794810237

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