法政大学 大学・入試案内2017
13/248

研究「自由と進歩」に挑む。研究紹介日本初のBID条例で、再生を果たす梅田駅前地区 もう一つ、教授が支援してきたのが大阪市の梅田駅前地区だ。ここでは、バブル崩壊後空き地になっていた地域の再開発が進んだが、継続的に街がにぎわい、市民が集う場所になるよう、地権者らが資金を拠出してタウンマネジメント会社を設立して地域運営を行うことが検討された。そこで注目されたのが、欧米のBIDであった。教授も参加する検討委員会が市に設置され、資金の徴収や使途、組織、行政と地域の役割分担などが話し合われ、日本初のBID条例が誕生した。現在、これに基づき、駅前広場や歩道を含む公共空間が地域で運営され、大勢の市民が参加する盆踊りやクリスマスイベントなどを通じて、一体感ある街が生まれている。「街に魂を吹き込み、生態系が自ら動き出すようにする取り組みです」。確かに、コンクリートの街が、血の通う生き物のように思える。そんな印象的な教授の言葉だ。札幌では、道路が市民に愛され、育まれる広場に変身 保井教授が支援している街の一つ、札幌。ここでは、地域の地権者や就業者、住民に支えられる民間の街づくり会社が、街中のさまざまな空間を管理運営し、市民に愛される街を創り出している。地下歩道では、地元アーティストと子どもたちがものづくりにチャレンジ。広場では、市民で作るフラワーカーペット、夏祭り、街中で働く人たちののど自慢大会など、多様なイベントが展開される。「人が集う機会を増やすことは、商業的チャンスを増やすだけでなく、企業や住民にとってもありがたいことなのです。心地よい空間を持つ都市に、人も会社も集まる時代です。人が集まると、より一層生きた街として代替できない場所が育まれていきます」と保井教授。街に魂を込める。それは、街に根付いて暮らす私たちの未来をも、より生き生きと温かいものに育んでいく挑戦だ。国際的な地域再生モデルは日本の街に適用されるべきか? 「Business Improvement District(BID)」と呼ばれる地域活性化手法がある。欧米で生まれた手法で、街の衰退に悩む地域の住民や地権者らが立ち上がり、資金を拠出して組織を立ち上げ、再びにぎわいある街となるようさまざまな事業を展開していくものだ。資金は、地域からの申請によって、行政が税という形で全員から徴収するため、フリーライド(ただ乗り)がなく、不公平感が生まれないことも大きな特色である。保井教授は、「こうしたBIDを含む、地域の再生に寄与する民間組織と行政との連携を国際的に調査し、その成功や失敗の経緯や原因を分析してきました。そうした民間街づくりや官民連携の形を日本ではどのように確立すべきか、現在、実践現場と連携しながら各地で検討しています」と言う。少子高齢化、人口減少時代の街づくりは、行政頼りではなく、それぞれの地域に合った形が求められている。BID Japanバージョンとでも言える取り組みが、日本でも展開されつつある。保井教授は、実にアクティブだ。先週ロンドンから戻ったと思えば、今週は大阪、福岡、北海道と、研究調査が続く。学生たちも時にこれに同行し、ある時は地域住民への取材を行ったり、自治体や企業との話し合いに参加したりする。大学近くの団地など、学生自らが街づくりを進めているプロジェクトもある。地域再生を阻む課題や解決法を実地の中で学び、研究発表に生かす保井ゼミは、学外の多くの人たちと関わることができ、人間的にも大きく成長できる場だ。保井 美樹 研究室研究室紹介

元のページ 

page 13

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です