東京大学 大学案内2019
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THE UNIVERSITY OF TOKYO 201958 今、私は起業家としてPreferred Networksという会社を経営しています。そのきっかけになったのは、大学での仲間との出会いでした。私自身はあまり真面目な学生ではなかったのですが、優秀な仲間が周りにいる環境にたくさんの刺激を受けました。授業だけでなく、周りの優秀な仲間から学んだことの方がむしろ多かったように思えます。そして、そのときの経験がきっかけの一つとなり、会社を創業しました。優秀な仲間が集い、お互いに刺激しあい、成長しあう、そのような環境を作って、新しい革新的な技術を継続的に生み出したかったのです。幸いにも今の会社には多くの素晴らしいメンバーが集まっており、新しくて刺激的な課題に挑戦することができています。日々、自分が成長できる機会が加速度的に増えていっているように感じています。その原点となったのは、大学のときの仲間との出会いにあったのだと思います。 また、もう一つ大学で経験した大事な思い出があります。私が所属していた情報科学科では、CPU実験という、マイクロプロセッサやコンパイラを1から設計して開発するという名物実験があります。この実験で、私は初めてハードウェアの面白さを知ることとなりました。実験室に寝泊まりして、縮まらないクリティカルパスと毎日戦いながら、なんとか速い速度を出そうと試行錯誤しました。ついに動いた瞬間は、何ものにも変えられない興奮大学は、成長への大きな1ステップ西川 徹 にしかわ とおる東京大学理学部情報科学科 入学IPA未踏ソフトウェア創造事業、1テーマ採択 第30回ACM/ICPC世界大会19位株式会社Preferred Infrastructure 創業 東京大学 大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 修了情報処理学会ソフトウェアジャパンアワード受賞株式会社Preferred Networks 創業PROFILE2001年2005年2006年2006年3月2007年2013年2014年3月株式会社Preferred Networks 代表取締役社長を味わいました。ソフトウェアとはまた違った世界を経験できたことが、今の事業にも確実に結びついています。 大学時代は時間もいろいろな人と出会うきっかけもあります。いろいろな学科があり、いろいろな研究室があります。あまり自分の方向性を枠にはめずに、興味の赴くままに、そして貪欲に、新しいことにチャレンジして欲しいと思います。私がいま携わっているITの世界では、5年後、10年後にはまったく新しい技術が必要となり、世界は目まぐるしく変わっていきます。新しい技術を取り込まなくなったら、技術者としての価値はすぐになくなってしまいます。大学を、成長を加速させるためのスタート地点と考えて、充実した日々を過ごして欲しいと思います。 対応力、というよく意味の分からない言葉が便利に使われている。臨機応変に、柔軟に物ごとに対処する力。不意打ちにあっても、慌てず騒がず洗練された対応を見せれば、「神対応」ともてはやされる。 長くNHKで記者として仕事をしてきたが、番組のキャスターを任されるようになり、その対応力を求められることが多くなった。生放送中でもロケ先でも、予測しがたい事態に対して当意即妙のコメントができると、それは番組にとってプラスでもある。 だから対応力を身につけるのは悪いことではない。しかし、対応力が持ち上げられる社会とはあまり面白くない。それは、摩擦を回避し、事なかれ主義でその場をしのぐことが尊重される社会とニア・イコールだからだ。 前置きが長くなった。伝えたいのは、東京大学を志す皆さんには、その場の対応力だけに頼るような人物にはなってほしくないということである。いざ東大の門をくぐったら、愚直に自分を磨き、あるいは研究分野に没頭し、うっとうしいこの社会の将来へと風穴を開ける、ドリルのような存在になってほしい。潤沢な時間と環境を存分に使い、記者である私が取材をしたくなるような人材に育ってほしい。 とんがり続けることは結構大変だ。しかし、政魅力ある怪物にこの3年は世界20か国以上を回りドキュメンタリーを制作東京大学教養学部文科三類入学在学中、野球部の投手として神宮通算8勝文学部国文学科卒業、NHK記者となる報道局政治部ワシントン支局NHKニュースウオッチ9 キャスターNHKサンデースポーツ2020 キャスターPROFILE1981年1985年1989年2005年2010年2018年~大越 健介 おおこし けんすけNHK記者主幹治記者だった自分が惹かれた取材対象は、とんがった怪物ばかりだった。清濁を併せ呑み、権力の重心の在りかにことのほか敏感な人々。彼らの真実に肉薄する取材は、こちらの消耗度も激しいものだったが、彼らは時代を引っ張る推進力だった。(ただ、それが良い方向だったかどうかは歴史の判断によるが)。 何も政治家になってほしいという意味ではないし、ましてや妙な化け物になれと言っているわけでもない。自分の中にある怪物を大事に、という意味だ。自身にとんがる芽を見いだし、それが見つかったら遠慮なく、周りとの摩擦を恐れずに存分に伸ばしてほしい。 対応力など結果としてついてくる。相対的にものを見る世界に浸かり、無難な世渡り術を学ぶことなどいつでもできる。絶対的なものにこそ価値を置く。良心に裏打ちされたものであれば分野は問わない。東京大学は、そのための場所と機会を与えてくれる最良の場所のひとつである。大学の同じクラスの仲間であり、共同創業者の岡野原大輔(左)と大手町オフィスの地下にあるファナックのロボットと会社メンバー先輩からのメッセージ

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