東京大学 大学案内2017
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THE UNIVERSITY OF TOKYO 201758 子供の頃から宇宙が好きでした。5歳のときアポロ11号の人類初月着陸をテレビで見たことや、小学生の夏休みに見たウルトラセブンの再放送が、宇宙に興味を持ったきっかけです。大学では宇宙工学等の勉強をしようと考えていた高校2年生のとき、医師である叔父の「患者さんが良くなって退院していく時が一番嬉しいんだ」という言葉に感激し、進路を変えて医師を志しました。東大で素晴らしい先生方にご指導いただけたこと、そして友人に恵まれたことが、私の財産です。 医師として忙しく働いていた医学部卒業9年後に新たな日本人宇宙飛行士の募集があり、宇宙への憧れが蘇って応募、幸運にも選抜されました。その後約12年間訓練を積み重ねた2011年、初の宇宙飛行任務として国際宇宙ステーション (ISS)に約5ヶ月半滞在し、様々な科学実験を行いました。その一例はタンパク質の結晶成長実験。宇宙の無重力では、地上より良質なタンパク質結晶ができ、地上に持ち帰って分析するとより細かいところまで立体構造がわかります。3次元の複雑な形をしたタンパク質の反応部位はカギ穴に例えられます。その詳しい凹凸がわかるため、そこにピッタリのカギ、すなわち新薬の候補化合物を効率的に探すことが可能になるのです。現在決定的な治療薬がない難病のDuchenne型筋萎縮症の治療薬を開発するため、宇宙研究の成果を基に、研究者が製薬会社と共同研究を進めています。他にも医学から宇宙へ、そして宇宙医学古川 聡 ふるかわ さとし東京大学医学部医学科卒業同大学博士(医学)取得東京大学医学部附属病院第1外科学教室勤務病院の麻酔科、外科に勤務し、消化器外科の臨床及び研究に従事NASDA(現JAXA)よりISSに搭乗する日本人宇宙飛行士の候補者と 選定されるISS第28次/第29次長期滞在クルーのフライトエンジニアに任命される第28次/第29次長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSに165日間滞在PROFILE1989年2000年1989年~1999年1989年~1994年1999年2月2008年12月2011年6月~11月宇宙飛行士、宇宙医学生物学研究グループ長癌増殖抑制関連などたくさんの有用なタンパク質結晶が作成されています。宇宙での実験を通じ、地上での我々の生活がより豊かになる一例です。 現在の私は、宇宙長期滞在という貴重な経験を活かしてゆきたいと考え、ISSへ飛び立つ仲間の支援に加え、主に宇宙医学の研究を推進しています。宇宙に長期間滞在する際に生じる医学的課題、すなわち骨・筋の弱体下、宇宙酔いと重力酔い、免疫能低下、心循環系、視力障害、閉鎖環境の精神心理的影響、放射線被ばく等の解決を目指した研究です。 私からみなさんへのメッセージです。1)勉強に限らず、身の回りのいろいろなことに興味を持ってください。その中から自分が好きなこと、得意なこと、向いていることがきっと見つかることでしょう。2)将来こんなことをしたいという夢を持ってください。そして、3)その夢を実現すべく、一歩踏み出し努力してください。みなさんの夢が叶うよう、応援しています。 私は、もともと生物の研究者になることを志して理科二類に入学しました。実際に農学部に進学し、アサリについて修士論文を書いた自分が、一体なぜ最終的にアナウンサーという道に進んだのか、傍から見れば理解に苦しむかも知れません。しかしそれはひとえに、東大という最高の環境だからこそ知ることができた、「自分の限界と可能性」に起因しています。 大学に入ってからも志を追いかけ続け、夢を叶えられたとしたら、それ以上に素晴らしいことはありません。しかし私の場合、東大の濃密な内容の講義、才能あふれる先生方や学友たちと接していく中で、生物の研究者になりたいという自分の志が、井の中の蛙とも言える甘い考えであったことに気付かずにはいられませんでした。ハイレベルな環境だからこそ、自分の「限界」もくっきりと見えてきたのです。自身の能力では、思い描いたような研究者になることはとてもできない。では、一体自分には何ができるのか? その先のヒントをくれたのもまた、東大ならではのすばらしい環境でした。教養学部で、分野にしばられず好きな講義を自由に履修できたことで得られた、視野の広さ。そして、山や海へどんどん分け入る大らかな農学部実習を通して体感した、生き物そのものが持つ輝き。自自分の限界と可能性を知る「ZIP!」で生物の不思議を扱う「マスカレッジ」教養学部理科二類 入学農学部水圏生物科学専修 進学大学院農学生命科学研究科 進学大学院農学生命科学研究科 修了日本テレビ放送網 入社「ZIP!」総合司会PROFILE2000年2002年2004年2006年2006年2011年〜桝 太一 ます たいち日本テレビ アナウンサー分で研究できないならば、その意義や魅力を伝える側に回ればいい。第一線の研究を目の当たりにした自分だからこそ、伝えられるものもある。それは、一度「限界」を知ったがゆえに見出せた、入学時には想像もしていなかった自分の新たな「可能性」でした。 今、実際にアナウンサーという仕事を通し、生物の魅力を伝える企画に携われています。もし東大の環境に触れていなければ、自分の限界も可能性もぼんやりしたまま、中途半端な道を歩んでいたかも知れません。大きく広がる海の存在に気付けるのは、井戸の壁にぶつかったことがある蛙だけです。是非とも、思いっきり壁にぶつかりに、そしてその先にある自分の可能性を探しに、東大に来て下さい。PCRFセルユニットの取り付け準備を行う古川宇宙飛行士先輩からのメッセージ©JAXA/GCTC©JAXA/NASA

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