東京大学 大学案内2017
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 文学部の授業でとても重要なのが、各専修課程に必ず設けられている演習(ゼミ)と呼ばれる授業です。専修課程によってその内容は違っていますが、 もっぱら教員が講義を行う授業とは異なり、テキストの輪読や調査の報告など、学生が主体的に参加するところに特徴があります。ふつう演習は、参加者全員の顔がわかるくらいの少人数で行われ、学生は自分で勉強してきたことを教員や仲間の前で発表し、教員を交えて質疑応答や議論を行うことになります。はじめは気後れしたり、自分の間違いを指摘されることを嫌がったりすることもありますが、演習での「失敗」は必ず力になるものです。 2年間を通していずれかの演習に参加することにより、文学部の学生は卒業論文を書く力を身につけていきます。ときにはティーチング・アシスタントを務める先輩の大学院の学生が助けてくれるかもしれません。ゼミの仲間は、貴重な友人となるでしょう。を打ち出しながら、学術論文の形式に従って、論文を書くというのは、決してなまやさしいことではありません。提出期限を間近に控えた4年次の正月は、とてもお屠蘇気分にはなれないことでしょう。しかし、テーマは何であれ、卒業論文は著者である学生の情報収集・解析能力、構想力、表現力、忍耐力、そして体力という人間としての基本性能を高める絶好の機会なのです。この試練を乗り越えた学生は、どこに行っても立派な社会人として通用するに違いありません。是非、文学部でこの試練にチャレンジしてください。質量ともに第一級の文献の海が、皆さんを待っています。学びの特長 文学部生は必ずいずれかの専修課程に属します。文学部は大学院人文社会系研究科に接続していますから、一つの専修課程には学部3年から博士課程までの年齢層の異なる学生が教員や助教とともに同居することになります。大学院の学生の中には留学生も少なくありません。これをふつう研究室とよびます。規模の大小はあるものの、研究室は日常的に学生と接する助教に統率されたファミリーの観を呈します。どの研究室にも共同の辞書室あるいは学生談話室のような場所があり、そこでの予習や談論、自主的な勉強会を通して、進学当初は緊張し気後れしていた3年生もしだいに溶け込み、4年生になるころには知的にも人間的にも、しばしばたくましい成長ぶりを見せてくれます。同じ分野を専攻する先輩や同輩との語らいや友人関係は、卒業した後も貴重な財産となることでしょう。 大学では英語以外にさまざまな外国語が教えられています。とりわけ文学部では3・4年生を対象とする外国語教育に重点が置かれています。英独仏露の他、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ヒンディー語、中国語、韓国朝鮮語、アラビア語、ペルシャ語、ラテン語、ギリシャ語、チベット語等があります。せっかく学んだ外国語です。それを活用しない手はありません。文学部では、翻訳ではなく、オリジナルの言語で書かれたテキストをきちんと読む力を養うために「原典を読む」という授業を開講しています。これは、文学部の学生に限らず、全学に開かれており、カント、源実朝、司馬遷、チョムスキー、フランク・オコナー、ラ・フォンテーヌ、ボードレール、プラトーノフ、ガルシア=マルケス等の作品や、「タルムード」、「グリム童話」、「仮名手本忠臣蔵」等を自主的に読んでいくのです。そこからは、必ずや新しい世界が開かれていくことでしょう。ここで培われた読む力は、大学を卒業した後も、一生を通して皆さんの知性と感性を高めてくれるに違いありません。 文学部の学生にとっての最大の試練は、おそらくこの卒業論文の作成でしょう。その形式や内容は専修課程によって違いがありますが、学生生活の総決算にあたるもので、これがきちんと書けないと卒業することはできません。自分の考えていることを、その妥当性を吟味しつつ、説得力のあることばで過不足なく表現すること──それはとても難しく、苦しい営み。だからこそ心弾む作業なのです。 また、大学院に進学しようという学生は、ここで自分の力をアピールしなければなりません。自分でテーマを設定し、先人たちの研究とは異なった新しさ研究室という学問のコミュニティ原典を読んで新しい世界を開く卒業論文という試練心の財産知性と感性海の中へ研究室の様子中村敬太郎「正直」による1870年度版J.S.Mill,On Libertyの翻訳(1871)  文学部というと、ひたすら本を読んでいる所と思われるかもしれません。しかし、それは違います。行動文化学科の心理学や社会学では実験や社会調査が不可欠ですし、考古学の発掘はもとより、じつにさまざまな実習が行われています。中にはアジア農村調査のように完全に自主的な海外実習があり、その長年の努力は2004年、東京大学総長賞によって表彰されました。文学部の学生は、研究室や図書館の外にも出ているのです。書を携えて、たいていは。実地に学ぶ演習で自分を鍛える書を捨てないで外に出よう気後れなんて常呂演習施設での実習風景「演習」の授業風景後期課程 文学部THE UNIVERSITY OF TOKYO 201719

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