尾道市立大学 大学案内2019
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研究室紹介026経済学史経済コース・准教授林 直樹 経済活動を各人の自由に任せたほうがよいか、それとも政府が管理したほうがよいか、という古典的問題を取り上げましょう。18世紀のフランスにケネーという人がいました。彼は、農産品取引を完全に自由化しなければ農業の発展はないと考えました。しかしあるイギリス人がケネーに反論して、「完全に自由化しないと発展できないほど、個々の人間の努力はやわなものではない」と述べました。このイギリス人は、のちに「経済学の父」と呼ばれます。アダム・スミスです。 もちろんスミスも、取引を厳しく規制する政策には反対でした。不必要な規制は品物の値段をつり上げ、一部の人に甘い汁を吸わせるというのが、反対の理由でした。しかし彼は、完全な自由と厳格な管理の、双方に批判を浴びせるバランス感覚によって、市場における自由競争の効率性と政府介入による調整の必要性という、現代ではそれぞれミクロ経済学とマクロ経済学が扱っている問題の所在を、明らかにしてみせたのです。 この他にも、経済学の歴史、略して経済学史には、見逃せない数多くのドラマがあります。そしてそのドラマティックな展開がそのまま、経済学が現在の形をしている理由を、説明してくれるのです。

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