國學院大學 大学案内2017
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文献や史料探しに奔走したが、小林清親の没後100年を記念した雑誌が発刊されるというタイムリーな出来事にも遭遇した。学びの足跡/テーマ発見から結論を導くまで樋口:卒業論文では興味深いテーマを扱っていますね。峯岸:「近代日本の諷刺画の展開とビゴー」として、フランス人諷刺画家ジョルジュ・ビゴーと、明治時代の日本の諷刺画家である本多錦吉郎と小林清親との関係性について研究しています。樋口:諷刺画に興味を持ったきっかけは何だったのですか?峯岸:歴史の教科書や史料集には必ずと言っていいほどビゴーの諷刺画が載っていますが、授業ではビゴー自身について詳しく触れることはなく、どのような人物なのだろうとずっと気になっていました。樋口先生は学生の意思を尊重し、好きなことを研究させていただけると聞き、先生のゼミに入りました。樋口:卒業論文では同じテーマに継続的に取り組まねばなりません。自分がやりたいことでなければ続きませんし、面白くもありませんからね。峯岸:3年次はビゴーについて調べようと、過去の論文を読んでいきました。が、ビゴー研究に取り組んでいる研究者が極めて少なく、卒業論文で扱うには難しいと思い始めていました。そうした行き詰まりを打開できたのは樋口先生から助言をいただいたからでした。樋口:ゼミの進行としては、自分の関心のあるテーマについて、前期は「人物と事件」、後期は「時間(時代)と問題」という観点で調べて発表してもらいます。3年次の2回の発表を通して、漠然としたテーマを具体的に絞り込み、自分がやりたいことを見つけ出していきます。峯岸:私の場合は、後期にはビゴーが生きた明治時代の言論統制について調べました。ビゴーだけでは論文が書けないと行き詰まっていたとき、樋口先生から「研究の疑問点を見つけなさい」とアドバイスをいただき、同時代の日本諷刺画にまで視野を広げてみました。樋口:その結果、本多錦吉郎と小林清親に注目した、ということですね。峯岸:彼らとビゴーとの接点を見つけ、お互いへの影響について調べていくうちに、清親がビゴーと接触したと思われる年以降、清親の画風がガラリと変わっていることに気付きました。樋口:よく気付きましたね。史料はどのように集めていきましたか?峯岸:國學院大学の図書館だけでなく、西洋絵画の史料が豊富な他大学や国立国会図書館へも足を運びました。樋口:論文にまとめる際は、情報を集めることと同じくらい、情報を切り捨てることも重要です。盛り込むことにより主張がぼやけてしまう情報もある。卒業論文への取り組みを通して、必要な情報を取捨選択し、処理し、表現する力が付いたのではないでしょうか。峯岸:調べていくときりがないので、自分の主張を裏付ける根拠として必要な情報かどうかを、常に意識していました。私の場合、史料は絵が多いため、解釈や発想の論理的根拠を提示することが難しく、苦労しました。樋口:そこがまた、面白さでもあったのでしょうね。峯岸:はい。歴史の学修を通して、多角的な視点を持つことの大切さを学びました。例えば、歴史的事件一つとっても、政府、民衆、軍部と、立場によって事件の見え方や意義、影響がまったく違います。これは日常生活でも同じことです。人によって見方、感じ方が違い、それぞれの立場を考慮して考えていくことが、問題解決の糸口となると思います。樋口:その通りですね。歴史から学んだことを、現在、そして未来に活かしていってほしいと思います。行き詰まりそうな研究に、広い視野で新たな活路を見出す。行き詰まりそうな研究に、広い視野で新たな活路を見出す。峯岸 麻衣 4年生[取材時]私立獨協埼玉高等学校卒業内定先:ホシザキ東京株式会社ビゴーと日本人諷刺画家の関係性を研究する。テーマ設定で行き詰まるも、視野を広げて打開する。主張の根拠として必要な情報を取捨選択する。明治時代に人気を博した諷刺雑誌『団団珍聞』より。3名とも当誌に寄稿しており、接点の一つとなっている。 口 秀実 教授専門:東アジア近代史文学部史学科049

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