上智大学 大学案内2017
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世界を動かすのは、「見えざる手」か、人間の意志か。林 政治学や文学や心理学に興味があって、カリキュラムを見てみると自分の関心ある領域が統合されているのが経営学科だと思いました。その直感が間違ってなくてよかった。山田 経営学は、経営者のためだけのものではなく、人間の組織を研究するものですから。林さんのゼミの論文はドイツのソフトウェア企業・SAPでしたね。林 はい。インターネット・オブ・シングス(IoT)をテーマにしてみました。IoTは、原材料、工場、顧客をITでつなげることで顧客が欲しいものをつくる新しい仕組みです。SAPはドイツ政府の製造業成長戦略に全面的に協力して新しいプロジェクトを進めています。アメリカはGoogleやAppleが多国籍企業として強い発言権をもって牽引していますが、ドイツの製造業は大企業主導というより競争力のある多数の中小企業が強い基盤をつくっていることが特長ですね。山田 SAPは今、世界4位のソフトウェア企業ですが、ビジネスの世界をどう変えようとしていると思いますか?林 ドイツを中心としてEUを世界の製造業のリーダーにしようとしています。そもそもEUにはアメリカ流の市場原理主義とは違う考え方が根づいています。アメリカは金融や情報産業で利益を上げていますが、SAPがあるドイツは製造業が強く、従業員への利益分配も比較的適切になされているように思います。それと比較すると、市場の自由競争の結果として投資家や経営者だけに偏重して利益配分するアメリカ的な仕組みには疑問を感じています。山田 たとえば、アダム・スミスから始まる「見えざる手」の考え方は、市場メカニズムが正しく機能すれば、利益が適切に分配されて社会全体の経済が成長するという主旨ですが、そこには市場の参加者である人間が、人間同志という共感を共有しそれを意識しながら行動する、という前提があるんですね。そこにはいろいろな反論や反証があるにせよ、現在でも経済学の基本的な概念のひとつであるということは間違いない。林 経済学は社会や世界の全体を見る、経営学は企業などの組織を個別に見る、という違いでしょうか。山田 そうですね。経済学は人間を抽象化してその行為の結果を膨大なデータとしてさまざまな方法で分析する。そうすることで初めて見えてくる大きな流れや変化があります。経営学は、組織がどのようにして自らの目的を達成しようとするのかをストーリーの中心に据える。ただ組織は、ある経済環境の中で行動する。そこがふたつの学問の接点ということになりますね。経済学部長 経営学科教授山田 幸三アントレプレナーシップ、大企業の新事業開発、ベンチャー企業の経営と支援などの研究を中心に取り組み、最近は伝統産業の産地の協働・人材育成のシステムと企業家活動を主な研究テーマとしている。主著に『新事業開発の戦略と組織』『伝統産地の経営学』など。経営戦略論、事業創造論、経営管理論を担当し、経済データと企業のケースを踏まえて講義している。経営学科 2015年度卒業林 亜沙子企業を通して世の中のさまざまな動きを知った。ゼミではフィールドワークを行い、マクロ・ミクロ両方の視点から物事を見ることで視野が広がった。経済学部経営学科経済学科P.87P.8985

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