上智大学 大学案内2017
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憲法で「環境」は守れるか。佐藤 小学校のとき、京都議定書がニュースになっていたため、地球温暖化に興味を持ちました。環境問題の解決には、自然科学やテクノロジーだけでなく、法律や政治からのアプローチも有効ではないかと考え、地球環境法学科を選びました。入学後は、環境法を勉強する前提として必要だと思い、法学入門などの基礎科目や民法、憲法などの授業も大事にしてきました。矢島 環境法を勉強してみて、どんな感想をお持ちですか?佐藤 環境法の領域では、環境問題への対処の指針が決まっている国際法の方が先行しています。それに基づいて日本では、法改正を繰り返しながら国内法を追いつかせているような状況です。それを踏まえると、日本国憲法の人権保障規定に、環境権が含まれていないのが問題ではないかと思うのですが。矢島 環境権が含まれていないのは、憲法が制定された段階では環境権という概念がなかったからです。それでは新たに加えればいいのかというと、そういうわけでもありません。憲法改正の是非もさることながら、環境権という権利の内容がまだ曖昧なためです。実際、憲法学説では、13条の幸福追求権や25条の生存権の解釈から環境権を導き出していますが、最高裁判所が環境権なるものを正面から認めたことはありません。むしろ、訴訟を通じて権利侵害を救済するだけではなく、環境問題を未然に防ぐ制度や法律をつくるといった政策立案の方が効果的だと思います。佐藤 たしかに環境問題では、そうしたことが一番大事ですね。たとえば、エネルギー政策について環境法の観点から学びましたが、火力発電は大量のCO2が排出されるし、コストも高い。その点、原発は優位だけれど、事故を考慮すれば、結局は原発のコストは高くなる。もちろんコスト計算だけでは決められませんが、そのようなさまざまな要因を総合的に考慮して、政策決定する必要があると思います。矢島 法はもともと、何らかのサンクション(制裁)によって社会秩序を規律するものとして機能してきました。社会の中でこういうトラブルが起こったから、それを解決し、あるいは防止するためにルールがつくられるというわけです。しかし、社会の将来を見越して、社会のあり方を一定の方向にリードするという機能も、最近は強調されています。佐藤 はい。先生の法学入門の授業で聞いた覚えがあります。矢島 環境問題に関しては、そうした意味での法の機能にも期待したいですね。憲法に環境権が書かれていれば根拠になるというのは、ごく表層的な議論のように思いますよ。佐藤 なるほど。しっかりと政策論議をしたうえで、法制度としてつくり上げていくべきなんですね。法は、人々の生活に寄与するためにあるのですから。法学部長 法律学科教授矢島 基美近年の研究テーマは、いわゆる幸福追求権を中心とする人権の基礎理論、解釈論に関するもの。それに付随して、憲法と生命倫理にまたがる問題にも関心を寄せている。近著として、自己決定権などの論題を取り上げた『現代人権論の起点』(有斐閣刊)がある。地球環境法学科 4年佐藤 美紀将来の環境問題と政策に関心をもち入学した。3年次の環境法ゼミのグループ論文テーマは野鳥保護の法政策の課題について。大学の講義では環境問題に対し国内法・国際法・経済等さまざまな側面から学ぶことができた。法学部地球環境法学科国際関係法学科法律学科P.79P.81P.8377

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