上智大学 大学案内2017
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久田 卒論について話しましょうか。澁谷 はい。「フォトボイス」という質的調査法を用いて行いました。まだ手法としては確立されていないので、世界のいろいろな研究者がいろいろな試みを実践しています。簡単に言えば、あるコミュニティのメンバーに、そのコミュニティの写真を撮ってきてもらって、その写真を持ち寄って話し合うというものです。写真と会話、つまり声という意味でフォト+ボイスと名づけられています。久田 心理学には、いろいろな分野があって、これはひとりの人間というよりも、コミュニティのなかの人間をテーマにしたコミュニティ心理学的な研究ですね。澁谷 自分は臨床系だけではなくて社会心理学にも興味があって、実験系の授業ばかり取りました。卒論の「フォトボイス」は上智の学生に協力してもらって、自分が属する上智という空間の写真を撮ってもらって、みんなで話し合ってもらいました。そのセッションを通じて、それぞれのメンバーのコミュニティへの帰属意識や居心地がどう変化するのか、ということを見たかったのですが、想像以上の効果が証明できました。久田 写真、というところに意味があるね。個人の視線が共有されることで、それはひとつのメディアになる。それについて語るだけで、見慣れた風景の中に新しい意味を発見したりする。それが人やコミュニティを元気にすることがあるんだよ。澁谷 哀しみも共有されれば、それが癒やしになったりするということですね。イギリスだと「フォトボイス」の手法を使って社会的な政策提言に活かそうとする傾向が強く、アメリカだとエンパワメント、つまり人を元気にするためにという傾向が強いようです。久田 心理学にも写真を使う分析手法はたくさんあるわけですが、「フォトボイス」は写真に対する反応を分析するだけでなく、写真を撮るという行為とそれを人に見せながら語るという行為が加わるというところがおもしろいと思う。澁谷 人間は不思議だなと思って心理学を選んだわけですが、心理学はあまりに幅広くて奥深い。生理心理学や認知心理学にも興味があって、もっと勉強すればよかったと少し後悔しています。久田 後悔か…。でも少しやり残したことがある方が自然だし、それが次への動機づけにもなる。4年の間で何かを究めるというより、その先も追究していきたいという自分のテーマを見つけることが大事なんだよ。人間は不思議、だからおもしろい。総合人間科学部長 心理学科教授久田 満学校、病院、企業、地域社会などのコミュニティの改革が研究テーマ。個人の変化を追究するのが臨床心理学だとすれば、個人を取り巻く生活環境を変えることによってコミュニティ全体のQOLを改善しようと考えるのがコミュニティ・アプローチの特長。学生には研究室に閉じこもらずに、外の世界を体験するように勧めている。心理学科 2015年度卒業澁谷 誠コミュニティ心理学ゼミ所属。大学4年間のさまざまな経験を通して多くの人に支えられてきたことを実感し、コミュニティの重要性を、身をもって学んだ。総合人間科学部看護学科社会福祉学科社会学科心理学科教育学科P.65P.67P.69P.71P.7363

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