上智大学 大学案内2017
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世界には、人間の思考という目に見えない遺産が無数にある。柿澤 東南アジアとかアフリカの人々に興味があります、というと、なぜフランス文学?と聞かれることが多いので、先回りすると、たとえばベトナム、カンボジア、ラオスや、アフリカの数多くの国々は、かつてフランスの植民地でした。そこでまずフランスの文化を学べば、それらの国々の人々に対して何か貢献できる仕事がしやすいかな、と思ったからです。大塚 そういう動機でフランス文学を選ぶのは珍しいね。でもきっかけは何でもいい。何と出会えるかが大切だから。柿澤 まずサルトルと出会いました。『嘔吐』を授業でやりました。実存は本質に先立つ。その考え方にとても惹かれます。コップは水を注ぐもの、という本質がそのカタチというか存在を規定しているけど人間はそうじゃない。生きていく過程で何かを選びとって、それがその人間の本質を形づくる。それ以外のフランスの思想家、詩人、作家もやったのですが、自分にとってはサルトルが強力で。大塚 それまでの考え方をある意味で逆転したサルトルの思想が、なぜ第二次大戦後の欧米や日本で熱狂的に迎えられたのか。それぞれの文化、時代がどういう読み方をしたのか、という観点でも考えるとおもしろいのでは。作者の意思とは別に、読者の価値観や問題意識が、その読み方に反映するから。柿澤 というふうにフランス文化を少し学んで、カンボジアとかに行ってみたんですが、フランス的なものを感じることはできませんでした。もちろん自分のなかでもフランス文化のイメージは曖昧なままなんですけど。大塚 世界が近代に入って、国という枠組みが強くなって、その過程で他との差異を強調する意味でつくられてきたのが、それぞれの国の「文化」であるという考え方がありますね。柿澤 サイードの『オリエンタリズム』には、異文化に対するイメージがどうつくられるのか、ということが書かれていましたが。大塚 そう、あれは重要な指摘です。あの本で指摘されている西洋中心主義と相似形の日本中心主義が我々の中にもあるかもしれない。そういうことに気づけるようになるのは大切だね。ところでフランスへ行くつもりは?柿澤 今年行きます。大学でコトバはみっちり勉強したので、フランス語でも英語でもコミュニケーションは大丈夫だと思います。それからサルトルとサイードについてもまだ上辺だけなので、もっと勉強して自分の中で深めようと思います。大塚 しっかり勉強してください。ただ、勉強してよかったと効き目がわかるのは10年後かもしれないけれど。文学部長 英文学科教授大塚 寿郎研究のテーマは、19世紀アメリカの小説と宗教、政治との関わり。ことに文学が民主主義の伝統形成に果たした役割に注目している。また太平洋を舞台にした文化交流を研究する共同研究にも参加。授業ではアメリカ思想史、小説分析を中心とした演習、Critical Reading(文学研究法)などの授業を担当。フランス文学科 4年柿澤 博史東京都出身。大学生活においてカンボジアでの支援活動や東南アジア・ヨーロッパ周遊で多くの海外の人々と触れ合うことでグローバルな能力を培うことができた。文学部新聞学科フランス文学科ドイツ文学科英文学科国文学科史学科哲学科P.49P.51P.53P.55P.57P.59P.6147

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