上智大学 大学案内2017
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サイエンスは、地球の未来と太古を見つめる眼でもある。築地 江河さんは物質生命理工学科で大気化学の専攻でしたね。江河 はい。大気中に起こる化学反応のシミュレーションをしています。理論計算でモデリングする比較的新しい分野です。中学生のときに「不都合な真実」という映画を観て、地球の温暖化に興味を持ったのがきっかけで、世界が直面している大きな問題だから、それを解決できたらおもしろいだろうと思っていました。築地 大気を対象としても、それを空気の流動状態として巨視的に、あるいは物理的に捉える方法ではなく、分子レベルで化学的に分析する方法ということですね。こういうサイエンス系の基礎研究は非常に重要です。大気の状態から起きる化学反応を把握し、その結果どういう物質がつくられるのかが明らかになると、それを他の気象学や私の専門である流体力学に取り込んで、地球全体としてそれがどのように拡散するのか、長い年月で地球の環境にどういう影響を及ぼすのかという予測の基礎になる。江河 約27億年前に大気中の酸素濃度が急激に上昇する「大酸化事変」という現象が起こりました。この現象を境にして、地質記録に残っている硫黄の同位体比に変化が起こったのですが、この変化の原因の一つと考えられる含硫黄分子の反応機構を、コンピュータを用いて理論計算で求めました。硫黄を含むさまざまな分子の反応機構を数値化することで、最終的に硫黄の大気循環をシミュレーション化することができ、大気組成が明らかになることで同位体比の変化の原因を解明することができるからです。この研究は、生命の誕生や他の惑星大気の解明に繫がると考えられています。研究室のコンピュータには反応機構を求める計算プログラムがあるのですが、これはオリジナルのもので、代々進化させていっています。築地 コンピュータは研究には欠かせないものではあるのですが、ただ解を出すのではだめで、どういうパラメータで、どういうロジックで、出てきた答えなのかを理解しておく必要がありますね。研究室は、セバスチィアン先生の研究室ですね。学会には参加しましたか ?江河 参加しました。学部生ではなかなか参加する機会がないので、いい経験になったと思います。卒業研究発表でも、要旨のまとめ方、話し方、伝え方などプレゼンテーションの技術の大切さを学んだと思います。築地 言葉や国の境界を超えて、優れた研究であれば世界からすぐに評価されますね。研究にはもちろん時間がかかる。しかし、その目標が達成できれば、世界にも、その人自身の人生にも大きなインパクトを与えることができる。サイエンスとテクノロジーの分野の醍醐味は、そこにあると思いますね。理工学部長 機能創造理工学科教授築地 徹浩専門は、流体工学。私たちのまわりに存在している空気や水などの流体の流れのメカニズムを解明し、その結果をもとに環境問題やエネルギー問題等を解決するための研究を行っている。例えば、建設機械において、騒音が小さく、効率が良い油圧装置の開発など。物質生命理工学科 2015年度卒業江河 翔太大気化学研究室に所属。研究内容は理論計算を用いた化学反応の反応機構の解明。理系分野だけでなく、語学にも興味を持ち、アメリカへの留学経験もある。国内外問わず、幅広いフィールドで活躍できる人材になることを目指している。理工学部情報理工学科機能創造理工学科物質生命理工学科P.123P.125P.127119

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