上智大学 大学案内2017
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「難民」と「移民」は、何がちがうのか?末久 中学生のときに、歴史の本に載っていたイスラーム建築の写真に魅力を感じて、いわゆる「中東」地域への関心はそこから始まっています。高校時代にイスタンブールとカイロへ旅行しました。いろいろな建造物、古代文明の痕跡にも強い印象を受けましたが、その直前に「アラブの春」が起こったこともあって、政治の分野にも興味を持つようになりました。赤堀 イスラームはアフリカやアジアにも広まっているので、総合グローバル学部の学生には、ぜひイスラームについて知ってほしいですね。末久 イスラーム=中東という単純なイメージでは、イスラームも中東も捉えられない。そういう多様性が見えてきたのは上智に入学してからでした。赤堀 たとえば、ヨーロッパに中東から数多くの人々が移動していて、これを「イスラム難民」と呼ぶメディアがありますが、シリア正教会などのクリスチャンたちも大勢脱出しているので、正しい表現ではないですね。末久 メディアが彼らを難民と言ったり、移民と言ったりするのはなぜだろうと考えました。難民=保護すべき存在ということに自動的になりますが、歴史的にみればドイツはトルコから、フランスであれば北アフリカから、大勢の移民、いわばチャンスを求めてやって来た人々がいる。彼らに対する潜在的な恐怖や脅威があるので、メディアによっては難民と呼ばずに、移民という言葉を使っているのかという気がします。赤堀 メディアや本でさまざまな情報にアクセスするにしても、ひとつの単語にもさまざまな思惑が絡んでいる。そこに立ち止まって、その違いに気づく、考える、ということも、この学部で学んでほしいことのひとつですね。そして、難民の問題は射程が長い。国家は「国民」が正式メンバーで、それ以外の人々を難民や出稼ぎや一時居留の「外国人」と分類するのは近代になってからです。難民とは何か、と問うことは同時に、国とは、国民とは何かを問うことにつながっていく。末久 トルコについていえば、約200万人の難民を受け入れています。そもそもトルコそのものが、かつてオスマン帝国が衰えて後退していく過程で、多数の難民が移住してできあがった国ともいえる側面がある。もっと中東について深く勉強したいので、アラビア語を早く自分の中で英語と同じ運用レベルまで上げられたらと思っています。赤堀 アラビア語は、正則アラビア語とは別に、口語のアラビア語が各地で発達した言語で、宗教の世界やメディアでは正則アラビア語、日常生活では口語と使い分けられているんですね。私は学部の2年から始めましたがまず正則アラビア語だけを勉強したので、大学院のときにアラブの遊牧民と暮らした際、最初はまったく彼らの言うことが理解できませんでした。1年からやっているならきっとどちらも上達すると思いますよ。総合グローバル学部長 総合グローバル学科教授赤堀 雅幸砂漠に住むベドウィンの研究をはじめとして、イスラームの現代的なあり方に注目し、スーフィズムと聖者崇敬の学際的共同研究を推進して、新しい研究分野の確立に挑戦している。専門は人類学、イスラーム地域研究。総合グローバル学科 3年末久 剛中東の政治・社会から建築や食文化など広く関心がある。ゼミでは中東地域の紛争の分析と解決について多面的に研究するゼミに所属予定。日本独自のアプローチで中東地域の紛争を解決していきたいと考えている。総合グローバル学部107

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